時間とスペース その②
こんにちは。
まずは、これを見て欲しい。
リーグ戦: 21勝12敗5分 勝点68
CL: ベスト16
国内カップ戦: ベスト4
今季を何も知らない人がこの成績を見て、あのチームのことを思い浮かべる人は誰もいないはずだ。
しかし、これは現実であり、実際に今シーズン起こったことである。
読者の皆様はもうお気づきでしょう。
これは、ここ3シーズン最強の名を欲しいままにしていたチーム、レアル・マドリーの18-19シーズンの成績である。
一体何がどうなったら、たった1シーズンでこんなことになってしまうんだろう?
今回は、バルセロナから少し離れ、このことについて書いていこうと思う。
①:何がどう変わったか?
まずは状況の確認をしよう。
17-18シーズンの基本形は、
このような形だった。ベイルの調子がなかなか上がらず、イスコをフリーマンのように起用していたような記憶がある。
そして、今シーズンは
怪我や監督交代で序列の変化がたびたびあったので難しいが、基本このような形だった。
ポゼッションおじさんはイスコ大好き、
ソラーリは若手大好きっていう印象。
さて、何が変わったか。
正直ほぼほぼ変わってない。
しかし、ある一点が大きく変わっている。
ご存知の通り、ロナウドである。
確かに、ロナウドは史上2番目のフットボーラーであり、ことCLに限っては史上最高の選手と言って間違いないだろう。
そんな選手がいなくなれば、当然チーム力が落ちることは間違いない。
しかし、衰えも指摘されていたロナウドが1人いなくなっただけで、CLを3連覇したチームがここまで落ちぶれるものなのだろうか?
結論を言えば、レアル・マドリーもまた、歪な選手構成によって今シーズンを棒に振ってしまったのである。
②:破滅的な選手構成
私は前回の記事で、バルセロナの支配力の低下の原因を、歪な選手構成に求めた。
⬇︎前回記事です
お暇があればぜひ。
今シーズンのレアル・マドリーは、バルセロナが可愛く思えてしまうほど、とんでもなく酷い構成で戦っていた。
まず、比較のために、17-18シーズンから見ていこう。
[時間とスペースを生み出す選手]
[時間とスペースを生かす選手]
レアル・マドリーは、シャビの言う「時空」を支配していた。
3連覇中のレアル・マドリーは、どんな相手と戦っていても、常に余裕を感じさせるプレーをしていた。
その要因は、センターライン+マルセロの圧倒的な支配力と、ロナウドの超人的な得点感覚にあり、その支配力・得点力に裏付けられた、最後には自分たちが勝つという絶対的な自信にあった。
その絶対的な自信を体現したような選手が、他ならぬクリスティアーノ・ロナウドであった。
数多くの時間とスペースを生み出す選手に比較して、それを生かす選手がロナウド、ベイルだけというのは、バランスが悪いのでは?と思われるかもしれない(ベイルはいないことも多い)
しかし、ロナウドという選手は、チャンスを逃す回数も多いが、チャンスを与え続ければ、どんな相手からも決め切ることのできる選手である。その意味で、昨季までのレアル・マドリーは一見歪ながらも、適切なバランスの範囲内を保っていたように思う。
では、今シーズンはどうだったか。
[時間とスペースを生み出す選手]
こちらの選手メンバーは大きく変わっていない。というか全く同じである。
W杯明けのシーズンということで、主力選手に疲れが出ていたものの、それは他の有力チームも同じことなので言い訳はできない。
問題はここではない。
[時間とスペースを生かす選手]
こればかりは仕方ないことだろう。ロナウドは明らかに衰えが目立ってきており、ビジネスマンであるペレス会長が新たな「顔」を求めようと思ったのも仕方のないことだ。
ただし問題は、ロナウドが去った後、ペレス会長がこの史上空前の選手の穴を埋めるために獲得した選手である。
ヴィニシウス・ジュニオール。
まだあどけなさの残る、可愛らしい笑顔の少年だ。溢れんばかりの才能があり、輝かしい未来を想像させるに十分な選手ではある。
彼の輝かしい才能は、ロナウドの穴を埋めるに足るものでは決してなかった。
それは、ヴィニシウスの才能がロナウド以下だなどという意味ではない。
それは、選手の特性の話である。
ヴィニシウスは、明らかに「生み出す」側の選手であり、「生かす」ことに長けた選手ではないのである。
つまり、2018-19シーズンのレアル・マドリーの選手構成は、「生み出す」選手ばかりで、「生かす」選手が皆無という異常事態が発生してしまったのである。(ベイルはいないものと考える)
これこそが、今シーズンのレアル・マドリーの根源的な問題であった。
ポゼッションおじさんが監督をしようが、ソラーリに変えようが、ジダンを復帰させようが全く安定せず、上向くことが無かったのが良い証拠である。
③:おわりに
チーム編成は、球団運営にとって監督の選択以上に重要である。
「勝利」のために何が必要なのかを、会長、GM、監督など球団全体が同じ絵を描けていなければならない。
ペップ・グアルディオラを招聘したマンチェスター・シティ、クロップを招聘したリバプールは、間違いなく球団全体が同じ絵を描くことができているチームである。
これから数年は、彼らを中心に欧州サッカー戦線が回っていくことは間違いない。
来シーズンに向けて、積極的な補強を続けるレアル・マドリーが、この2チームに追いつくことができるのか、そして補強について不穏なニュースしか聞かない我らがバルセロナはどうなってしまうのか、19-20シーズンが今から楽しみである。
え?マリアーノ?いたっけなそんな選手…