カンテラ軽視を数字で確かめる 〜その①〜
【はじめに】
バルセロナの栄光とそのカンテラ、すなわち「ラ・マシア」とは切っても切り離せない関係にある。
(名残惜しいが写真の寮は2011年閉鎖)
古くはギジェルモ・アモールやペップ・グアルディオラ
黄金期をもたらしたシャビ・エルナンデス、カルロス・プジョル、アンドレス・イニエスタ
そして史上最高の選手リオネル・メッシ
バルセロナの栄光を彩ってきたのは、ロマーリオやリバウド、ロナウジーニョといった助っ人外国人だったが、そのチームの土台を形作ったのは、必ずカンテラ出身者であった。
しかし現在、「バルセロナはカンテラーノを軽視している」という批判の声が後を絶たない。
筆者もその批判に全面的に賛同するが、今回からのエントリーで、その批判を数字で裏付けしていこうと思う。
【2019/20シーズンのカンテラーノたち】
今シーズンの公式戦(リーガ、コパ、CL)において、カンテラーノがどれぐらい起用されたのか、確かめてみよう。
ジェラール・ピケ(33)
32試合2840分1G
今シーズンも守備の要としてがんばってくれた。
年齢的な衰えも隠せないが、プレースタイル的にまだまだ頑張れるはず。
リオネル・メッシ(32)
30試合2551分23G16A
出場すれば相変わらず神がかったプレーを連発。
しかし、沈黙する試合もたびたびあり、守備を完全に免除されている分批判の声も聞かれる。
セルヒオ・ブスケツ(31)
31試合2419分2G2A
ブスケツはいつでもブスケツ。セティエン就任後はセンターサークルの王様として君臨。まだまだ彼の力は衰えていない。
セルジ・ロベルト(28)
28試合2195分1G2A
自身の怪我、スアレスの怪我もありアシストが減少。しかし、相変わらずのインテリジェンスと運動量には脱帽。
ジョルディ・アルバ(31)
23試合1737分1G2A
加齢かチームの問題か、攻撃での貢献が激減。すると今までは目をつぶっていた守備の問題が目につくように。でもまだまだできるはず。
アンスー・ファティ(17)
23試合1012分5G1A
突如現れた神童。左サイドでキレキレのドリブルを披露する。右でも悪くはないが、左でこそ本領が発揮されるだろう。これからメッシコースを行くのかドスサントスコースを行くのかは神のみぞ知る?
カルロス・ペレス(22)
12試合617分2G2A
個人的にかなり期待している左利きのアタッカー。
タイミング良い飛び出しにペドロを重ねて見ていたが、残念ながらペドロほどの器用さはなく、冬の移籍市場でローマへ。もう少し我慢してほしかった。
カルロス・アレニャ(22)
5試合260分
めっちゃ上手い。ほんとに上手い。でも、得意なエリアがメッシと完全に被ってしまっていたために、なかなか本来の実力を出しきれず。冬の移籍市場でベティスへ。ぜひバルサで大成して欲しいのだが果たして、、、
ラフィーニャ・アルカンタラ(27)
3試合187分
めっちゃ上手い。ほんとに上手い。でも、致命的に運がない。シーズン序盤メッシ・スアレスの不在時に大活躍してくれたことは忘れません。もう少しあのバルサを見たかった…。夏の移籍市場でセルタへ。もうそこそこの年齢なので、バルサでの未来には暗雲が立ち込めてる。
ムサ・ワゲ(21)
3試合181分
2018年の加入なのでカンテラーノと言っていいのか怪しいが、とりあえず。特に印象に残ることもなく冬の移籍市場でニースへ。
リキ・プッチ(20)
3試合93分
クレからの期待を一身に集める希望の星。
しかしたった93分では、自分の力を証明するには足りなかった。アルトゥールやフレンキーとの共存を考えると頭が痛くなる。
ロナルド・アラウホ(21)
1試合14分
出場即レッドカードという伝説を作ってしまった男。あの試合以降全く出番無し。
アレックス・コジャード(21)
1試合5分
5分で何しろってんだよ。
以上ご覧の通り、レギュラー陣にカンテラ出身者は5人。これはまずまずの数字と思える。
しかし、17歳のアンスー・ファティを除いて定期的な出場機会を得られた控え選手はおらず。これは擁護のしようがない。
ペレスやアレニャはその持っている力を十分に発揮できればレギュラーも狙えただろうが、残念ながらチームの柱はリオネル・メッシ。
メッシとの相性や、メッシに合わせることのできる器用さが1番の評価基準になる現状のチームでは、レギュラー奪取は難しかった。
【おわりに】
何をもって軽視、何をもって重視とするのかは様々な考え方があるだろうが、今回は全選手の出場時間に対するカンテラーノたちの出場時間の割合を計算してみた。
全選手の出場時間=37試合×90分×11人
=36630分
カンテラーノたちの出場時間
=14111分
14111÷36630=0.38…
つまり今シーズン、バルセロナのピッチに立った選手の約38%がカンテラ出身者だったということだ。
これを多いと見るか少ないと見るかは、今シーズンだけを見ていては分からない。
カンテラを重視していたとされる時代は、一体どれぐらいの割合でカンテラーノたちが躍動したいたのか?
次回以降は、少しばかり時間を遡って、それを検討していこうと思う。
前線の構成をどうする
こんにちは。
前回の記事はたくさんの方に読んでいただけたようで、嬉しい限りです。
これからもボチボチ書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
さて、欧州サッカーの幕が上がり早1ヶ月、今年も欧州最強の座を決める戦いが始まった。
ここ2年続けて、筆舌に尽くしがたいほど酷い負け方をしてしまった我らがバルセロナ。
筆者自身、5月から6月までずっと放心状態で、あれ以降サッカーを観ることが苦痛にすらなっていた。
いちファンですらこんな気持ちになるのだから、当事者たちの気持ちは推して知るべしである。
皆表にこそ出さないが、今年こそは…という熱い気持ちで満ち溢れているに違いない。
見返してくれると信じてる。
彼の三度目の正直を期待して、1年しっかりと追っていきたいと思う。
そんな思いで観戦した今朝のドルトムント戦だが、結果はご存知の通り、負けに限りなく近い引き分けであった。
いつものようにテアシュテーゲンという神の存在と幾らかの運に助けられた結果である。
しかし、ドルトムントという強敵との戦いで(しかもAway)、見えてくるものもあった。
①オートマティズムの欠如
バルセロナというチームは、ボールを動かしてなんぼである。
しかし、ただ動かすだけでは、ドルトムントレベルの相手には直ぐさま対応されてしまう。
そこで大事なことは、チーム全体がボールをどのように動かすかのイメージを共有できているかどうかである。
相手の思考・判断スピードを上回るボール回しを展開するには、ボールを受けてから出し所を探すようであってはならない。
バルサが欧州を席巻した時代、その中盤にはシャビ・イニエスタ・ブスケツという、遺伝子レベルでバルサのサッカーが刻み込まれた選手たちが君臨していた。
フレンキーとアルトゥールがコンビを組んでフルで戦ったのは今日で2試合目。
彼らにシャビイニのような阿吽の呼吸を期待するのは無茶だが、1日も早く「見なくても分かる」関係になってくれることを祈る。
②442アゲイン
やはりバルベルデはやってしまった。
442のメリットは前線に2枚残すことによって、殴り合いになった時、特大の大砲2門の力で叩き潰すことができる点だ。
しかし、大砲は火をふくことはなく、デメリットだけが残った。
フレンキーやアルトゥールが馬車馬のように走り回る姿はもう見たくない。
③幅と奥行き
主役は名脇役がいてこそ輝くものだ。
バルサが最強の名を欲しいままにしていた時代、シャビ・イニエスタは確かに主役だった。
しかし、その主役を輝かせていたのは、ペドロ・ビジャという名脇役である。
ゴールが中央にある以上、守備陣は中央を固めて守る。その中央の壁にほんの少しの綻びを作るのが、ペドロとビジャの役目だった。
彼らのやっていたことは主に2つ。
「ダイアゴナルラン」と「待つこと」である。
静と動を「適切なタイミングで」繰り返す。
この2つが攻撃に幅と奥行きをもたらすのだ。
今シーズン、フレンキーとアルトゥールが主役としてバルサのサッカーを牽引するには、彼らのための名脇役が必要なのだ。
最初は誰もが無名である。
ペップがアンリでなくペドロを重用し、スター選手の階段を上らせたように、バルベルデも決断を下さねばならないのではないか。
本当にCLを奪還する気持ちがあるのならば、彼を一人前の戦士として育て上げることが必要だと私は考える。
カルレスペレス
ペドロを彷彿とさせるランニングの質。
献身的な守備。左足のキック。バルサ愛。
静と動のタイミングと右足の精度は改善の余地あり。
中盤過多をどうする
こんばんは。
アドゥリスの衝撃的なゴールから始まった今シーズン、早くも1ヶ月が経過してしまった。
バルサはというと、結果だけ見れば2勝1分1敗の勝点7で5位。
ここ2シーズン、スタートダッシュからの逃げ切りでリーガをモノにしたバルベルデらしくない始まりとなってしまった。
しかし、結果だけにこだわらなければ、
ファティやペレスの台頭
グリーズマンの適応
メッシ不在での大量得点
などなど明るい話題はたくさんある。
中でもここ数日最もクレを賑わせたのは、間違いなくこの2人の共演だったはず。
フレンキーデヨングとアルトゥールメロ。
先日のバレンシア戦、圧巻のプレーを見せた2人である。
彼ら2人に、シャビとイニエスタを重ね、これからの輝かしい未来を妄想してしまった方は少なくないだろう。
何を隠そう筆者もその1人である。
ネットを検索すると、こんな画像も転がっていた。
クレの考えることはみな同じのようだ。
自分だけが変態じゃなくて少し安心。
さて、ここからが本題なのだが、
今シーズンのバルサには、フレンキーとアルトゥールが活躍すればするほど、逆に頭を悩ましてしまう大きな問題を抱えてしまっている。
お分かりの通り、中盤多すぎ問題である。
ざっと名前をあげていくと
フレンキー
アルトゥール
セルジロベルト
アレニャー
リキプッチ
バルサB所属のリキまで含めると、8人もいる。
たった3枠しかない中盤に8人である。
レギュラークラスの選手は6人。これでは、アレニャーやリキに成長の場を与えることはできそうにない。
これがウイイレなら、何ら問題ないだろう。
しかし、リアルの世界では、このような状況は許されて良いものではない。
サッカー選手は試合に出てなんぼであり、トップの選手であればそれはなおさらだ。
ではどうすればいいか?
私が考えられる案は3つ。
①コンバート
幸か不幸か、現在はウムティティの怪我が慢性化し、左CBの控えが不在の状況である。
バルサのCBに求められる能力は大きく2つ。
上質なビルドアップ能力と、独力でカウンターを潰す能力である。
成功例のマスチェラーノは、カウンターを潰す能力が抜群に高かった。いやもうほんとにエグいぐらい凄かった。
その意味で、本人がどう思うかは別として、ビダルの兄貴にも同じことが期待できるのでは?と考える。
ラキティッチはアンカーにも適応できたんだからいけるだろうという安易な考え。
しかし、これもその場しのぎの案でしかなく、根本的な解決にはつながらない。
②442アゲイン
中盤の人数が多いなら、中盤の枚数を増やせばいいだろう、という実に論理的な考え。
ここ2シーズンリーガを制したという保証付きの安心安全な戦い方!
ボランチを4枚中盤に並べ、圧倒的な組織力でがっちり守り、前線の破壊力で敵を圧倒!
昨シーズンまでのメッシスアレスに加えグリーズマンという大砲も備えてその威力は倍増!
これだけは絶対にやってはダメ。
でもやりそうなのがバルベルデ。
せめてリーガだけにしてね。
③冬に売却
結局これしか無いのかなと思う。
ラキティッチやビダルは長時間ベンチに座っていていいような選手ではない。
ましてや、後半の守備固め要員になっていいような選手たちでもない。
どちらもとは言わないが、どちらかの選手とはお別れしなければならない時が来てしまったのかなと思う。
世代交代は世の常。
今からお別れに向けて心の準備をしなければ…
グリーズマンの起用法を考える
こんにちは。シーズンが終わって約1ヶ月。
なかなかに忙しく、随分とサボってしまいました。移籍市場も活発になりだしたので、また細々と書いていこうと思います。
現在はコパアメリカが無事大きな怪我なく終わり、安心しているところです。
さて、今シーズンも我らがバルサは大枚をはたいて超大物アタッカーの獲得に踏み切りました。
その名はグリーズマン。相も変わらず移籍で不手際があったようですが、まあその話は置いておいて、彼を一体どのように現チームに組み込んでいくのが最適なのか、考えていきたいと思います。
①グリーズマンの特徴
ソシエダ時代から、長くグリーズマンを見てきたわけですが、彼を一言で言い表すとすれば、
「世界最高のリンクマン」
という言葉が1番しっくりきます。
リンクマンになれる選手は世界中にたくさんいますが、グリーズマンを世界最高と考える理由は、リンクマンをこなしながら得点も量産できる、という点に尽きます。
ピッチのあらゆる場所に顔を出す運動量と献身性、正確なタッチ、カウンターの起点となれるスピード、バリエーション豊富なフィニッシュワーク…などなど、長所を挙げればキリがありませんね。
FWに対しての戦術的要求が非常に厳しいシメオネの元で5年もの間エースとして君臨していたことが示すように、戦術理解度の高さも大きな特徴です。
したがって、あらゆるポジションで、一定以上の活躍を期待することはできるはずです。
しかし、彼の能力を最大限に発揮させるならば、FWとMFの中間ポジションで、潤滑油として働いてもらうのが一番だと思います。
②メッシとの共存問題
グリーズマンの良い所をたくさん書いていったわけですが、もちろん不安もあります。
それは、メッシと共存できるのか?
という、バルサに来るアタッカーには避けて通ることができない問題です。
グリーズマンとメッシが同じチームで試合をしたことが無いので、想像するしか無いわけですが、近いプレースタイルの選手で考えてみましょう。
グリーズマンに最もよく似ている選手は、ユベントスのディバラだと思います。
ディバラとメッシはアルゼンチン代表のチームメイトですが、その共存については長らく疑問視されてきました。
先日のコパアメリカ3位決定戦では、共に先発してメッシはアシスト、ディバラは得点し、一見問題が解決したかに見えましたが、早々にメッシが退場となり何とも言えない幕切れとなってしまいました。
よく言われるメッシとディバラの共存が難しいの理由は、2人の得意とするプレーエリアが丸かぶりしているから、というものです。
しかし、メッシというプレーヤーを長く見てきた方々ならば分かると思いますが、
メッシは周りの選手の状況に合わせて、自分がいるべき場所を瞬時に察知し、得点への最適な道筋を瞬時に描くことができる選手で、
場合に応じてパサーになり、ドリブラーになり、フィニッシャーになることができる人間を超えた何かです。
本来なら、ディバラとプレーエリアを住み分けすることなど容易なはずです。
では、なぜアルゼンチン代表ではそれが上手くいかないのでしょう?
私は、アルゼンチン代表というチームそのものに大きな問題があると考えています。
批判を覚悟で言ってしまえば、アルゼンチン代表には中盤がありません。
フォーメーションで言うと、7-0-3、4-3-0-3のような形となってしまっています。
もう一度言いますが、ディバラはグリーズマンと同じく世界屈指のリンクマンです。
しかし、アルゼンチンにはリンクすべき中盤が存在しません。これでは、ディバラの本来の力が発揮できないのも無理はありません。
このような状況でも、W杯やコパアメリカでそこそこの成績を残してきたのは、前線の3の個の破壊力が途轍もなかったからです。
ディバラは素晴らしい選手ですが、独力で何かを生み出すことに長けた選手ではありません。
あくまでも、周りのと連携の中で、自らを生かし周りを生かしていく選手です。
メッシとディバラの共存が難しい原因は、当の本人たちのプレースタイルやプレーエリアにあるのでなく、アルゼンチン代表そのものにあるのです。
では、我らがバルサはどうなのでしょうか?
もちろん、アルゼンチン代表とは比べ物にならないほどの人材を揃えています。
中盤がないなど口が裂けても言えません。
しかし、メッシとスアレスの破壊力に全てを託している現在のチーム構成は、本質的に言えばアルゼンチン代表と変わりありません。同じ病気にかかっているのです。
私には、フレンキーデヨングの獲得と、グリーズマンの獲得が大きく繋がっているのではないかと思えてなりません。
そう、この一連の補強は、「メッシ依存症」という病を克服するための大きなきっかけになるのではないか、と考えています。
③グリーズマンをどう使うか
さて、本題です。
先述したように、グリーズマンは大変器用で戦術眼の優れた選手なので、どのポジションで使っても一定の成果をあげるはずです。
しかし、バルセロナに課された至上命題は、あらゆるタイトルを獲得することであり、一定の活躍では満足されるはずもありません。
グリーズマンの能力を最大限に生かすための方法論を考え続けなければなりません。
まだスカッドも確定してない段階ですが、現時点で私が考えた案の1つを提示したいと思います。
3-3-4です。参考にしたのは、11-12シーズンのペップバルサ。
セスクとメッシの2トップに、ペドロやサンチェス、ビジャ、クエンカなどの両ワイド。
大まかに言えば、セスクとメッシが入れ替わり立ち替わりバイタルに現れて混乱に陥れ、それを消すため中央を圧縮すれば、両ワイドに大きなスペースができるという戦術でした。
シーズン通して使われた布陣ではなく、実際に強豪相手には4-3-3に戻したりしてたので、守備に無理があると言われればそうかもしれませんが、前線の組み合わせを考えると、最良はこのようになるのではないかと思います。
両ワイドは、セルジとアルバの方が安定すると思いますが、相手を押し込む圧力を考えると、やはりドリブル能力は欠かせません。
さらに、ジョーカーとしてスアレスやコウチーニョ、ブスケツを使えるという贅沢さです。
守備の崩壊より、選手の不満のたまり具合の方が早そうですね笑
④まとめ
バルベルデは保守的なので、先程の布陣をしく可能性はほぼゼロだと思います笑
しかし、冗談抜きに、今シーズンのバルサが全てを勝ち取るためには、今までの戦い方を抜本的に改革していかなければならないと考えています。
バルベルデもそのように考えているのではないかと思いますし、そう考えていて欲しいです。
そして、そのためのフレンキーデヨングであり、グリーズマンであるのだと思います。
3バックは無いかもしれませんが、来シーズンのバルサには、これまでの2シーズンには無かった何か、足りなかった何かを期待せざるを得ません。
皆さんはグリーズマンについてどのように考えているでしょうか?何か良い案があれば、お聞かせください。
時間とスペース その②
こんにちは。
まずは、これを見て欲しい。
リーグ戦: 21勝12敗5分 勝点68
CL: ベスト16
国内カップ戦: ベスト4
今季を何も知らない人がこの成績を見て、あのチームのことを思い浮かべる人は誰もいないはずだ。
しかし、これは現実であり、実際に今シーズン起こったことである。
読者の皆様はもうお気づきでしょう。
これは、ここ3シーズン最強の名を欲しいままにしていたチーム、レアル・マドリーの18-19シーズンの成績である。
一体何がどうなったら、たった1シーズンでこんなことになってしまうんだろう?
今回は、バルセロナから少し離れ、このことについて書いていこうと思う。
①:何がどう変わったか?
まずは状況の確認をしよう。
17-18シーズンの基本形は、
このような形だった。ベイルの調子がなかなか上がらず、イスコをフリーマンのように起用していたような記憶がある。
そして、今シーズンは
怪我や監督交代で序列の変化がたびたびあったので難しいが、基本このような形だった。
ポゼッションおじさんはイスコ大好き、
ソラーリは若手大好きっていう印象。
さて、何が変わったか。
正直ほぼほぼ変わってない。
しかし、ある一点が大きく変わっている。
ご存知の通り、ロナウドである。
確かに、ロナウドは史上2番目のフットボーラーであり、ことCLに限っては史上最高の選手と言って間違いないだろう。
そんな選手がいなくなれば、当然チーム力が落ちることは間違いない。
しかし、衰えも指摘されていたロナウドが1人いなくなっただけで、CLを3連覇したチームがここまで落ちぶれるものなのだろうか?
結論を言えば、レアル・マドリーもまた、歪な選手構成によって今シーズンを棒に振ってしまったのである。
②:破滅的な選手構成
私は前回の記事で、バルセロナの支配力の低下の原因を、歪な選手構成に求めた。
⬇︎前回記事です
お暇があればぜひ。
今シーズンのレアル・マドリーは、バルセロナが可愛く思えてしまうほど、とんでもなく酷い構成で戦っていた。
まず、比較のために、17-18シーズンから見ていこう。
[時間とスペースを生み出す選手]
[時間とスペースを生かす選手]
レアル・マドリーは、シャビの言う「時空」を支配していた。
3連覇中のレアル・マドリーは、どんな相手と戦っていても、常に余裕を感じさせるプレーをしていた。
その要因は、センターライン+マルセロの圧倒的な支配力と、ロナウドの超人的な得点感覚にあり、その支配力・得点力に裏付けられた、最後には自分たちが勝つという絶対的な自信にあった。
その絶対的な自信を体現したような選手が、他ならぬクリスティアーノ・ロナウドであった。
数多くの時間とスペースを生み出す選手に比較して、それを生かす選手がロナウド、ベイルだけというのは、バランスが悪いのでは?と思われるかもしれない(ベイルはいないことも多い)
しかし、ロナウドという選手は、チャンスを逃す回数も多いが、チャンスを与え続ければ、どんな相手からも決め切ることのできる選手である。その意味で、昨季までのレアル・マドリーは一見歪ながらも、適切なバランスの範囲内を保っていたように思う。
では、今シーズンはどうだったか。
[時間とスペースを生み出す選手]
こちらの選手メンバーは大きく変わっていない。というか全く同じである。
W杯明けのシーズンということで、主力選手に疲れが出ていたものの、それは他の有力チームも同じことなので言い訳はできない。
問題はここではない。
[時間とスペースを生かす選手]
こればかりは仕方ないことだろう。ロナウドは明らかに衰えが目立ってきており、ビジネスマンであるペレス会長が新たな「顔」を求めようと思ったのも仕方のないことだ。
ただし問題は、ロナウドが去った後、ペレス会長がこの史上空前の選手の穴を埋めるために獲得した選手である。
ヴィニシウス・ジュニオール。
まだあどけなさの残る、可愛らしい笑顔の少年だ。溢れんばかりの才能があり、輝かしい未来を想像させるに十分な選手ではある。
彼の輝かしい才能は、ロナウドの穴を埋めるに足るものでは決してなかった。
それは、ヴィニシウスの才能がロナウド以下だなどという意味ではない。
それは、選手の特性の話である。
ヴィニシウスは、明らかに「生み出す」側の選手であり、「生かす」ことに長けた選手ではないのである。
つまり、2018-19シーズンのレアル・マドリーの選手構成は、「生み出す」選手ばかりで、「生かす」選手が皆無という異常事態が発生してしまったのである。(ベイルはいないものと考える)
これこそが、今シーズンのレアル・マドリーの根源的な問題であった。
ポゼッションおじさんが監督をしようが、ソラーリに変えようが、ジダンを復帰させようが全く安定せず、上向くことが無かったのが良い証拠である。
③:おわりに
チーム編成は、球団運営にとって監督の選択以上に重要である。
「勝利」のために何が必要なのかを、会長、GM、監督など球団全体が同じ絵を描けていなければならない。
ペップ・グアルディオラを招聘したマンチェスター・シティ、クロップを招聘したリバプールは、間違いなく球団全体が同じ絵を描くことができているチームである。
これから数年は、彼らを中心に欧州サッカー戦線が回っていくことは間違いない。
来シーズンに向けて、積極的な補強を続けるレアル・マドリーが、この2チームに追いつくことができるのか、そして補強について不穏なニュースしか聞かない我らがバルセロナはどうなってしまうのか、19-20シーズンが今から楽しみである。
え?マリアーノ?いたっけなそんな選手…
時間とスペース
「フットボールとは"時空"」
「重要なのは、スペースとタイミングを理解すること」
時間とスペースを支配することこそが勝利のカギである、ということだそうだ。
そしてシャビは今シーズンのバルサについてこう語っている。
「バルサがUEFAチャンピオンズリーグ(CL)やリーガで優勝した時、僕らは試合を支配してきた。それが歴史が伝えてくれることなんだ。僕たち(バルサ)は今、ゲームを支配できていないんじゃないかと思う」
バルセロナ、そしてスペイン代表の黄金期を支え続けた彼の言葉は、自らのアイデンティティから遠く離れてしまった現在のバルサに重くのしかかる…
なぜこんなことになってしまったのだろう?
どうすればバルサは再びゲームを支配できるようになるのだろう?素人ながら少し考えてみようと思う。
①:監督の問題
2年連続の大失態でクレからの信頼がほぼゼロになってしまったバルベルデ。
支配力の低下をバルベルデに求めるべきだろうか?
私の回答はNOである。
もちろん、バルベルデの戦術は受動的で保守的で、目新しさの欠片もない代物であることは間違いなく、あまりに堅実なサッカーをし過ぎていて、自分が見ているのがあのバルセロナの試合だとは信じられなかったことが一度や二度ではない。
しかし、バルベルデは果たして好きでこのようなサッカーをしているのだろうか?
私は違うと思う。
バルベルデもクライフの教え子である。ゲームを支配し、相手を圧倒して勝ちたいと思っているに決まってる。
では、なぜこのようなサッカーを選択せねばならないのだろう?
理由は単純で、勝利のため、である。
いかにバルセロナとはいえ、美しいサッカーを目指して戦ったがために負け続けることを許すようなクレがいるだろうか?ましてや史上最高の選手を擁するチームが、である。
勝利するためには、ボールを保持しゲームを支配するのでなく、44でブロックを組み、メッシスアレスで叩き潰す方法が現在のチームには最適である、とバルベルデは結論づけたに違いない。
現に、昨季は二冠、今季は三冠まであと一歩という所までは行けた。
しかし、シャビが言うように、ゲームを支配できないバルサは、最後にしっぺ返しを食らうことになるわけだが…
では、本当の問題点はどこにあるのか?
バルベルデが勝利のために、このような方法を選ばざるを得なかったのはなぜだろう?
②:歪な選手構成
ところで、私は、サッカー選手は大きく2つに分けられると考えている。
スペースを生み出す選手と、
スペースを生かす選手だ。
たとえスペースを生み出しても、それを生かしてくれる選手がいなければ何も起きず、
逆にスペースを生み出せる選手がいなければ、それを生かすことはできない。
両者を比べると、圧倒的にスペースを生み出す選手が希少であり、重要であり、その力を持った選手がどれほどいるかが、勝敗に大きな影響を与えるといってもいいだろう。
とはいえ、両者は持ちつ持たれつであり、それぞれが良いバランスで構成されていてこそ、強いチームが生み出されるというものである。
(もちろん両方の力を兼ね備えたスペシャルな選手も存在する。)
では、現在のバルサのことを考えてみよう。
確かに、スペースを生かせる選手は山ほどいる。
メッシ・スアレスはもちろん、アルバとセルジの両SBをはじめとして、ラキティッチ、ビダルのインテリオール陣、そしてコウチーニョもこちら側の選手だろう。(コウチーニョのために皆がスペースを作ってくれるリバプールやブラジル代表での活躍でお解りかと思う)
しかし、スペースを生み出せる選手はどうだろうか?
考えてみてほしい。
狭いスペースに入り込んで相手を引き付けて息ができる選手がどれほどいるだろう?
ドリブルで相手をかわし、味方のために有利な状況を作れる選手がどれほどいるだろう?
相手の裏をかくパスで、味方に数秒の余裕を与えられる選手がどれほどいるだろう?
メッシ、メッシ、メッシである。
話を戻そう。
現在のバルサの最大の問題点は、生かされることに長けた選手が多いにもかかわらず、時間とスペースを生み出すことができる選手があまりに少ないこと、つまり歪な選手構成にある。
バルベルデが現在のような戦術を採用せざるをえないのも、このことが大きな原因だ。
大抵の問題はメッシという神が解決してしまうからこそ、表面上では大きな問題に見えないが、強大なライバルが相手ではそれが露呈してしまう、というわけだ。
③:来季に向けて
バルサの肝は誰がなんと言おうと中盤だ。
今季はその中盤に、スペースを生み出せる選手が存在しなかった。
ラキティッチ、ビダルはグレイトな選手ではあるが、自らスペースを生み出し、コントロールできるようなプレーヤーではない。
我らがブスケツは、今季別人がプレーしていたと言われても驚かないぐらい酷いシーズンを送った。
アルトゥールは希望の光だが、動き過ぎが玉に瑕で、逆にスペースを消しかねない。
では、来季再びバルサがゲームを支配できるようになるためにはどうすればいいのか?
答えは簡単だ。原点回帰。これしかない。
中盤に時間とスペースを生み出すことができる選手を起用する。これだけだ。
頼むぞフレンキー。
リキもたくさん使ってねバルベルデ 。
18-19 リーガ・エスパニョーラ ベスト11 MF・FW編
こんばんは。早速ですが、DF編に引き続き、MF・FW編です。
ちなみに選考基準は、基本的にその選手が出場することで、どれだけチームに良い影響をもたらすか、いないことでどれだけ悪い状況になるのか、というのが大きな判断材料になってる気がします。
いわゆる変えのきかなさってやつです。
それではいきましょう。
36試合9G7A
もはや説明不要のバレンシアのカピタン。元々素晴らしい選手だったが、マルセリーノの指導で一皮も二皮もむけた印象。
長い低迷期を乗り越え、ついにタイトルを獲得した今シーズン。いつもチームの中心にはパレホがいた。442の強固なブロックの中で光り輝くパレホの技術力こそがバレンシアの真髄だった。CLでも期待してます。
次点はロドリ。チームが変わっても全く変わることない安定感にはさすがの一言。スペイン代表でブスケツの後継者に指名されるのもうなずける。
35試合5G10A
シーズン当初は、サンティのプレーが見れるというだけで、大満足している自分がいた。
それもそのはず、彼のプレーをもう2度と見ることが叶わない可能性もあったからだ…
でも、サンティは今シーズンたくさんのプレーを見せてくれたし、たくさんのプレーで魅せてくれた。
ペジェグリーニのビジャレアルが大好きだった自分としては、サンティのカムバックは涙が出るほど嬉しいサプライズ。プリメーラに残留できて本当に良かった。
次点はラキティッチ。相棒のブスケツが不安定な中、中盤の大黒柱として大車輪の活躍。どうか移籍させないで下さい。
MF:パブロ・サラビア(セビージャ/スペイン代表)
33試合12G13A
浮き沈みの激しいシーズンだったセビージャだが、サラビア自身は最高のシーズンを過ごした。レアルマドリーへの復帰を熱望しているという報道があるが、メガクラブで活躍できるのかと言われると…。中堅クラブの王様ポジションがすごく似合ってる。これは褒めているつもりです。
清武はとんでもない化物とポジション争いをしてたんだと改めて感じたシーズンでもあったな笑
次点はデンベレ。コンディションさえ良ければ異次元のプレーを見せていた。怪我グセを直してくれれば世界最高も夢じゃない!
MF:ジョニー・ロドリゲス(アラベス/スペイン)
31試合5G10A
乾の移籍で見ることが多くなったアラベス。
いつのまにかジョニーのファンになってしまっていた。突破からのクロス、FK、CK、そしてロングスローまで、あらゆる場面で得点のにおいを感じさせる選手。バレンシアとかに抜群にフィットしそう。ステップアップに期待してます。
次点はサウール。器用すぎて色々なポジションをたらい回しにされて、もはや本職がどこなのか迷子。来シーズンは1年しっかりと中央で固定してあげて欲しい。
FW:イアゴ・アスパス(セルタ/スペイン代表)
27試合20G6A
セルタの魔術師。怪我に泣いたシーズンだったが、復帰以降、降格圏に沈むチームをたった1人で残留に導いた。おそらくセルタというチームにとって、メッシ以上の存在。
来シーズンは1年通した活躍で、セルタをもう一度引き上げていって欲しい。
次点はスアレス。衰えは隠せないが、やはり今のチームでメッシを最大限に生かすなら、スアレスは必要不可欠。
34試合36G13A
キャプテンとして、CL奪還を誓った今シーズン。骨折の期間を除き、序盤から終盤まで休むことなく神の如き活躍をし続けた。自分の拙い語彙力では形容することが不可能なほど、今シーズンのメッシは神々しかった。
それだけに、CLのあの試合が悔やまれてならない…だが、この無念は必ず来年晴らしてくれると信じて、応援し続けたい。
次点はベンゼマ。全てにおいて上手くいかなかったレアルマドリーの中で孤軍奮闘。ヨビッチが決まったみたいだけど、ベンゼマの地位は揺るがないはず。
以上です。ここまで読んで下さってありがとうございました。
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来シーズンが今から楽しみですね!